週末、逃避先のホテルにて。

コロナ禍になってからやってみたいと思っていた「都内のホテルに滞在してダラダラする」を、先週末ようやく実行した。

とにかく雑多に物が氾濫した「家」じゃない場所、生活から切り離された空間でリフレッシュしたかった。

PCを持ち込もうか迷ったけど、いや、ダラダラするために来たんだし、と思ってやめた。やめて正解だった。


夕方にチェックイン。ホテルに来る前に地元のおいしいパン屋さんで買った、クリームチーズといちじくのサンドを鞄から取り出して、紅茶を淹れて一息つく。銀座という都会の一等地で過ごす、静かでのんびりした時間。そんな時間が4千円程度で手に入るんだから、安いものだ。

ベッドにごろんと寝転んでテレビを付けたら、NHKで山口百恵の伝説のさよならコンサートが流れていた。そういえばSNSでも何度か番組情報を目にしたな、と思い出す。

とても21歳とは思えない、完璧な大人の女の風情でステージに立ってる。漠然とした「すごい歌手」というイメージしか持っていなかったから、コンサートのMCで話す姿が新鮮に映った。そして、同時に強烈な違和感も持った。

テレビの中の百恵ちゃんは、「ずっと女でいたいと思っていた」と話す。その「女でいる」って、どういうことなんだろう。「嫁ぐ前」とか、そういったワードにも時代性を感じた。でも、それ以上に、歌われる曲の歌詞がどうにも受け入れがたく感じた。なんか、すごく男にとって都合のいい女像なのだ。その、歌わせている背景にある「おじさんたち」の姿がどうにもチラつき、途中でテレビを消してしまった。(そういう歌詞の曲ばかりではないのだろうけれど)
絶大な人気のある女性歌手が歌う曲や生き様は、当時の若い女性たちにどんな影響を与えたんだろうか。


ホテル滞在は「ダラダラする」もだけど、「読書する時間と空間の確保」という目的もあったので、1月に新代田にオープンしたフェミニズム専門書店・エトセトラブックスで買った本たちをお供に連れてきた。

話題の『99%のためのフェミニズム宣言』は、自分にとってはスッと読み進められるタイプの本ではないが、だからこそ真剣勝負でじっくり読み込んでいきたい本だと思った。

柚木麻子さんの『BUTTER』は12月に主催したおすすめ本を紹介し合う読書会で、参加者の大学生の女性が持ってきてくれた本だったので、これを機に読んでみようと購入したもの。柚木さん原作のドラマ『ナイルパーチの女子会』も始まったので、そちらもたのしみ。

ふぇみん』は1946年から続く、歴史あるフェミ新聞だ。わたしは最近知ったばかりで、手に取ったのは今回が初めて。取り上げられる社会問題も興味深いし、映画評や句会のコーナーなんかもある。イベント情報欄の“決起集会”感も、呼ばれている…!という感じがしていい。これからも購入していきたいと思う。

安達茉莉子さんの『自分のことを“女”だと思えなかった人のフェミニズムZINE』もとてもよかった。表面は絵本のような仕立てになっていて、裏面は読みごたえのあるエッセイが綴られている。イラストもとってもかわいい。気軽にいろんな人が手に取って、文中にあるように“フェミニズムは「みんなのもの」だし、もっと日常になっていい”と思える人が増えたらいいなと感じる素敵なZINEだった。わたしもZINEつくりたい!


読書タイムを中断し、テレ東の『新美の巨人たち 女の生き様第6弾!石岡瑛子×冨永愛…世界に挑み続けた戦いの記録』を見る。石岡瑛子展の評判は聞いていたので、見るのをたのしみにしていた。
石岡さんの経歴をほとんど知らなかったので、「そうだったのか…!」の連続。ああ、あの広告ポスターも石岡さんのものだったのか、と気づかされること山のごとし。
番組のなかで一番印象に残ったのは、石岡さんが資生堂の入社試験の面接で、

もし私を採用していただけるとしたら、グラフィックデザイナーとして採用していただきたい。お茶を汲んだり、掃除をしたりするような役目としてではなく。それからお給料は、男性の大学卒の採用者と同じだけいただきたい

と言い放ったエピソードだ。かっこよすぎる。しびれた。

夕方見た百恵ちゃんの歌の歌詞の世界とあまりにもかけ離れていて、頭がクラクラした。百恵ちゃんは求められる偶像を仕事として完璧にやり遂げた、ということなのだろうか。増々わからない。

図らずも、偉大な才能を持った女性たちの生き方について思いを馳せる夜になった。


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